株式会社ティムス代表取締役社長の若林です。

前回に続いて、アクティビスト個人投資家こと田端信太郎さんとの対談YouTube動画の補足をしたいと思います。

「バイオ株 何を見て投資すればいいの?」

https://www.youtube.com/watch?v=DpQvlDkXwX8

対談の中で、田端さんより、赤字のバイオベンチャー企業を評価する物差しが分からない、直接的な言い方ではPERやROEのような「スピードメーターが全く通用しない」というコメントがありました。

これに対して私はrNPV(risk-adjusted NPV:リスク修正後正味現在価値)という指標を挙げました。rNPVは、製薬会社や機関投資家がバイオ企業を評価する際に用いている、スタンダードな指標です。より正確には、rNPVは開発品目の価値を評価する指標であり、その合計額がバイオ企業の企業価値であると考えられます。

※rNPVによる評価が特に適しているのは当社のようなパイプライン型のバイオベンチャーです。プラットフォーム技術型のベンチャーはまた違った発想による評価が適している場合があります。

一方で、私は「個人投資家がrNPVで企業評価をするのは難しい」とも言っています。rNPVの算出には数多くのパラメーターがあり、それらをある程度の正確さを持って見積もることは非常に難しいのです。専門スタッフを多数抱えている製薬会社にとっても簡単ではないですし、多くの投資家にとって高いハードルと言えます。

ただ、いくつかの数値が予想できれば、rNPVをある程度の範囲でざっくりと想定することは可能と考えています。数多くのパラメーターを要するrNPV計算ですが、中でも特に重要なのは(一般的に言って)以下の三つです。

  ① ピーク時売上高

  ② 製造原価

  ③ 開発成功確率

これらの要素をある程度予測できれば、rNPVの算定難度はぐっと下がります。私は、上場バイオ企業にこれらの予想数値を開示することを義務づけることも一つの考えではないかと思います。rNPVが全く予想できないのにバイオ企業の企業価値を予想しようとするのは、暗闇に向かって石を投げるようなものだからです。もちろん、これらの数値を開示する際には、それなりの根拠を示すことが重要です。根拠を示せば、その根拠が確からしいかどうか一定の検証をすることが可能になります。

開示を義務とすることが重要なのは、そうしないとバイオ企業側にとって開示が難しいからです。当社のように提携先がいる場合、通常は開示が大幅に制限されますが、法令上の義務であれば開示できることが多くなります。提携先がいない会社の場合も、開示することにより企業戦略上不利に働くことも考えられるので、開示により得られる利益が不利益を上回ることが明確でないと開示が難しくなりますが、この利益と不利益の比較は容易ではないため、よほどの場合でなければ開示しないことを選択するでしょう。

上場バイオ企業には、これらの数値を開示したい企業も開示したくない企業もあるでしょうが、業界の健全な発展を考えると開示義務を課した方がよいのではないかと思います。

次回以降は、上に挙げた三つの要素それぞれについて少し触れてみたいと思います。