株式会社ティムス代表取締役社長の若林です。

前回のポストでは、「rNPV」を大まかに把握するために、①ピーク時売上高、②製造原価、③開発成功確率の三つの要素が重要であると書きました(異論はあると思いますが)。

今回は、①ピーク時売上高と②製造原価について書きたいと思います。

① ピーク時売上高

医薬品のキャッシュフローは、典型的に下図のような経緯を辿ります(開発に成功した場合)。ピンク色の部分の面積は、ある医薬品がもたらす収益の累計額を示しますが、「ピーク時売上高」は山の高さを決める大きな要素です。ある医薬品候補が商業上どれだけのポテンシャルを持っているかを示す値であるとも言えます。医薬品には、年間売上数億円程度のものから数兆円に上るものまで、売上高に大きな開きがあるので、ここで桁を間違えるようなことがあると、rNPVの算定を大きく間違えることになります。

ただ、開発中の医薬品候補の売上高を予測することは、大手製薬会社でも大きく間違える場合があるほど困難であることには注意が必要です。「患者数」「臨床上どの程度のインパクトがあるか」「競合品に対してどの程度優位か(あるいは劣位か)」といった要素の想定に加えて、様々な事例を知っておくことが重要です。非常に広範な知識が必要なため、専門のアナリストを持たない投資家が独自に想定することは非常に難しいでしょう。だからこそ、企業側が根拠を添えて想定「ピーク時売上高」を示すことは意味があると思います。

※余談ですが、当社に関係する方が以前に製薬会社で開発にかかわっていた化合物は、当初の売上予測は世界で数十億円だったそうですが、最終的には数千億円の売上をもたらすヒット商品になったそうです。

 

出典:NASDAQ Webサイト(https://www.nasdaq.com/articles/investing-in-pharma%3A-the-drug-lifecycle)
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出典:NASDAQ Webサイト(https://www.nasdaq.com/articles/investing-in-pharma%3A-the-drug-lifecycle)

② 製造原価

ピンク色の部分の面積を決めるのに重要な要素のもう一つは、製造原価です。売上高と同様に、製造原価も品目ごとに大きな差があります。一錠数円~数十円で製造できる錠剤もあれば、遺伝子治療や細胞治療といった領域では投与一回あたりの製造原価が数千万円に上る場合もあります。売上高が大きくても製造原価が高ければ、ピンクの山の高さは低くなり、場合によってはマイナス圏に陥ることもあるかもしれません。

「rNPV」を算出する際に重要なもう一つの要素、③「開発成功確率」については次回書きたいと思います。