株式会社ティムス(以下「当社」)は、本日付にてTME Pharma A.G.(ドイツ、ベルリン市、以下「TME」)との間で、脳腫瘍を対象として開発中のNOX-A12(olaptesed pegol)の世界での開発権を目的とした独占交渉に関するタームシート(以下「本件タームシート」)を締結しました。
本件タームシートでは、拘束性を有する独占交渉に関する条項に加え、初発膠芽腫(グリオブラストーマ、GBM)を対象とした第Ⅰ相/第Ⅱ相臨床試験「GLORIA」の新たなコホートを実施すること、当社が本プロジェクトを目的とした子会社(以下「本件新会社」)を日本で設立すること、本件新会社は一定の資金を獲得した段階でTMEとグローバルでの開発・製造・販売権に関する正式契約を締結すること、TMEは本件新会社の少数株主としても本プロジェクトに関与すること等の諸条件についても拘束性を持たない条項として定められています。
NOX-A12は、成人の脳腫瘍の中で最頻かつ最も悪性度が高いとされる膠芽腫(グリオブラストーマ、GBM)を対象とした臨床開発がドイツで進められており、GLORIA試験のうち既に複数コホート17症例に対する投与及び解析が実施済です。このうち、放射線治療及び抗VEGF抗体ベバシズマブを併用し、GBM患者の中でも治療選択肢が限られている患者群(手術不完全・MGMT非メチル化)を対象とした6例のExpansion Cohortにおいては、最も重要視される全生存期間(Overall Survival、OS)の指標においてヒストリカル・コントロールに対して統計的に有意な効果を示しました(治療群19.9ヶ月 vs ヒストリカル・コントロール 9.5ヶ月)。この結果は、2026年4月に学術誌Nature Communications上で発表されています。[1]
NOX-A12の作用機序は、「血管形成(vasculogenesis)」に重要な役割を果たすケモカインの一種CXCL12を特異的に阻害することで、放射線照射により破壊された腫瘍周辺の血管が再構築されるのを妨げるものです。Vasculogenesisは、GBM細胞が増殖に必要な酸素及び栄養を供給するため血管を再構築する作用機序の一つで、VEGFを通じて起こる「血管新生(angiogenesis)」とは異なる作用です。
過去において、GBM患者を対象として「血管新生(angiogenesis)」阻害剤である抗VEGF抗体ベバシズマブを放射線治療と併用する大規模治験が行われましたが、OSの延長は見られませんでした。この要因として、CXCL12を介して「血管新生」ではない「血管形成」によりGBM細胞への酸素・栄養供給が行われているとの仮説があり、抗VEGF抗体とCXCL12阻害剤を併用する治療法が期待されていました。
本プロジェクト[2]においては、GLORIA試験の新規コホートとして、POC取得のために5アーム×20症例、計100症例の臨床試験を実施する計画です。GLORIA試験は非盲検試験であり、試験の進捗に応じて随時解析を行います。当初は、既に6施設が稼働しているドイツで試験を開始し、IND(新薬臨床試験開始申請)が既に承認されている米国や、日本での実施についても検討する予定です。
なお、GBMを適応としたNOX-A12については、米国においてオーファン・ドラッグ指定及びファスト・トラック指定を受けており、ヨーロッパにおいてもオーファン・ドラッグ指定を受けています。
若林拓朗(代表取締役社長)のコメント
優れた作用機序と、グリオブラストーマという非常に難しい疾患において、少数症例ながら顕著な臨床試験結果を有するNOX-A12の開発に関与する機会を非常に嬉しく思います。当社が手がけてきた品目は、脳梗塞・急性腎障害・脊髄損傷という、既存の治療がほとんどないか明らかに不十分である疾患を対象としています。GBMも同様に治療選択肢が限られており、特に治療が困難ながん種です。
今後も当社は、研究から臨床試験までをワンチームとして行う組織体制と、グローバルでの臨床開発・事業開発の経験を強みとして、世界とつながった創薬事業を進めてまいります。また、NOX-A12については、本件新会社は日本企業となりますので、日本での開発も積極的に検討してまいります。
本タームシート締結により取得する独占交渉権の対価として、当社がTMEに支払う金額は、本タームシートの定めに従い最大で30万ユーロとなります(外部資金の獲得見込の状況等を踏まえ、両者の合意により変更する場合を除く)。これによる当社の今期業績への影響は軽微です。
[1] Frank A Giordano et al. “RNA aptamer-based CXCL12 inhibition combined with radiotherapy and bevacizumab in newly-diagnosed glioblastoma: expansion of the phase I/II GLORIA trial” Nature Comm. 2026
[2] 本項に記載の臨床開発計画は、本件タームシートの拘束力を有しない条項に記載された現時点の想定であり、今後の協議、資金調達その他の条件により変更され、又は実施されない可能性があります。