■4月7日は「世界健康デー」!エビデンスに基づいた行動で健康を守る
4月7日はWHO憲章がはじめて設定されたことを記念して定められた国際的な記念日「世界健康デー」。今年のテーマは「Together for health. Stand with science」(科学に基づき、みんなで健康に) 。科学的根拠、事実、科学に基づく指針に基づき行動することや、より健的な未来のために科学主導の解決策を支援することなどを呼び掛けています。今回は「世界健康デー」に合わせ、ティムスが臨床試験を通じて科学的根拠の蓄積に取り組んでいる3つの治療薬についてご紹介します。
■治療法が確立されていない疾患へのティムスの挑戦 ~飽くなき探求心で世界を変える~
ティムスでは、脳梗塞や急性腎障害、治療抵抗性高血圧といった、治療選択肢に課題が残る疾患の治療薬の開発に取り組んでいます。「飽くなき探求心と挑戦で、世界を変えるクスリを創る」の企業理念のもと、世界のアンメットメディカルニーズ克服に挑み続けます。
◆脳梗塞(開発中の新薬:TMS-007(JX10))
世界では脳梗塞により年間約330万人が命を落としています(※1)。後遺症により介護が必要となるケースも多く、超高齢社会の日本においては、脳梗塞への治療法確立は喫緊の課題ともいえます。その一方で、現在の治療薬のほぼ唯一の選択肢といえる「t-PA」は発症後原則4.5時間以内の投与が必要という条件により、先進国においても脳梗塞患者の5~10%にしか投与されていないといわれています(※2) 。当社が開発中の「TMS-007」は投与可能時間を大幅に延ばすという新たなアプローチで脳梗塞治療に挑んでいます。
※1 Projected Global Trends in Ischemic Stroke Incidence, Deaths and Disability-Adjusted Life Years From 2020 to 2030
※2 Nature Reviews Neurology volume 10, (2014); Time is brain' after stroke, regardless of age and severity
◆急性腎障害(開発中の新薬:TMS-008)
急性腎障害(以下、AKI)は、数時間から数日の間に腎機能が急激に低下する疾患です。AKIの発症原因には心臓手術や薬剤の副作用などさまざまなものがあります。正確な疫学情報はありませんが、米国では年間約56万人が発症し(※3)、入院患者のうち20~25%が死亡(※4)、生存しても慢性腎臓病に移行する患者も多いという報告もあります。このような重大な疾患であるにもかかわらず、AKIを対象として承認された治療薬は存在せず、まだ有効な治療方法がないのが現状です。ティムスではこうした医療ニーズに対応するため、「TMS-008」の開発を進めています。
※3 Clin J Am Soc Nephrol 1: 43–51, 2006
※4 Nephron. 2017 ; 137(4): 297–301
◆治療抵抗性高血圧(開発中の新薬:JX09)
日本における高血圧患者数は約4,300万人と推計されており(※5)、3種類以上の降圧薬を内服しても降圧目標に達しない治療抵抗性高血圧は、全高血圧患者の5~10%程度に上ると推定されています。現在の高血圧治療薬では、治療を継続することにより薬効が得られなくなってしまう患者が存在することがわかっており、治療抵抗性高血圧の大きな原因となっていると考えられています。
治療抵抗性高血圧の患者においては、副腎皮質から分泌されるホルモンの一種で、血圧を上げる働きをする「アルドステロン」を制御すれば血圧を下げられる可能性があります。現在はアルドステロンそのものではなく同ホルモンが作用するミネラルコルチコイドに働きかける薬は存在するものの、十分な薬効が得られていません。そこで、新たなアプローチとして浮上したのがアルドステロン合成そのものに作用する「JX09」です。
※5 特定非営利活動法人日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2019』
■ 心臓手術後のAKI患者を対象とした臨床試験の準備が進む「TMS-008」
TMS-008はSMTP化合物群に属する化合物で、抗炎症作用と抗酸化作用を有しますが、血栓溶解作用は持ちません。さまざまな炎症性疾患動物モデルで薬効を示していますが、当社では急性腎障害(AKI)を対象として優先的に開発を進めています。健康成人を対象とした第Ⅰ相臨床試験においては、良好な安全性と忍容性が観察されました。現在、心臓手術後のAKI患者を対象とした前期第Ⅱ相臨床試験の2026年内開始にむけて準備を進めています。
■ CORXELと連携して開発中の治療抵抗性高血圧の新薬候補「JX09」
JX09 は当社が バイオ医薬品企業「CORXEL」 より日本における独占的な開発販売権のライセンスを受けた、治療抵抗性およびコントロール不良の高血圧を対象としたアルドステロン合成阻害剤です。血圧を上げる働きをするホルモンの一種「アルドステロン」を合成する酵素を抑えることにより血圧を下げることを目指しています。非臨床データでは、アルドステロン合成酵素と構造のよく似た別の酵素にはほとんど影響を与えずに、標的のみを強力に阻害する効力があることが示唆されています。
現在、CORXELはJX09の第Ⅰ相臨床試験を実施しております。
■ ティムスが開発中の脳梗塞治療薬の新薬候補「TMS-007」

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- 上図:Niizumaet al. (2024) Stroke55,2786–2794
TMS-007は血栓溶解作用に加え炎症を抑える作用を持っており、この2つの作用により血栓溶解を進めつつ脳保護的に働くことが示唆されています。そのため、現在の脳梗塞治療薬の「原則4.5時間以内」の投与の壁を大きく超えることが期待されています。
2018年から2021年にかけてティムスが国内で実施した臨床試験(前期第Ⅱ相臨床試験)では、下記の事項が示唆されています。
①安全性
TMS-007群とプラセボ群と比較した解析では、TMS-007の投与による有害事象(好ましくない、または意図しない兆候・症状)の増加は認められませんでした。
②治療可能時間を拡大
この臨床試験は、既存薬の原則発症後4.5時間以内という制限を大きく超える、12時間の枠で行ったもので、平均的な薬剤の投与時間は脳梗塞発症9時間程度でした。それにもかかわらず、プラセボ群と比較して脳出血などの副作用は増加しませんでした。
③後遺症を抑える
脳梗塞発症90日後に後遺症のない状態(患者の自立度の尺度モディファイド・ランキン・スケールmRSで0-1)まで回復した患者の割合は、プラセボ18.4%に対し、TMS-007投与群では40.4%と、統計学的に有意な差となりました。
TMS-007は急性期脳梗塞治療の新たな治療選択肢につながる可能性が期待されています。TMS-007には、日本発の画期的な新薬候補として世界の医療現場から期待を寄せられており、現在、20ヶ国に及ぶ大規模な国際臨床試験(ORION試験)において、投与時間を発症後最大24時間までに拡大し、この結果を検証中です。
■新年度は生活リズムが乱れがち…「世界健康デー」をきっかけに生活習慣の見直しを
ティムスは科学・研究による新薬開発を通じて医療ニーズに応えるとともに、大切な命を守ることを目指しています。アンメットメディカルニーズに対する治療薬の開発と並行して重要となるのが予防につながる一人ひとりの行動です。
高血圧や脳梗塞には生活習慣が大きく影響します。飲酒や喫煙、睡眠不足、ストレスのほか、食べすぎや塩分過多なども原因のひとつに。新年度を迎え、環境や生活リズムの変化が大きい4月。生活習慣の乱れによるさまざまな要因の蓄積が、命をも脅かす疾患につながる恐れもあります。
また、急性腎障害は水分摂取量の不足や塩分過多なども原因としてあげられます。近年は春秋が短い二季化が進み、これからの季節は夏に向けて急激に気温があがるため、こまめな水分摂取を意識して脱水を防ぐことも重要です。
「世界健康デー」をきかっけに今一度ご自身の生活を振り返ってみませんか。
■ ティムスとは
当社は、2005年に、東京農工大学発酵学研究室教授(2023年定年退職、現特任教授)の蓮見惠司(当社設立以来、研究成果実用化のため、取締役、代表取締役社長等を兼務)らが発見した医薬シーズを実用化することを目的に設立されました。
同研究室は、故・遠藤章博士(コレステロール低下薬スタチンの発見者、2008年ラスカー臨床医学研究賞、2017年ガードナー国際賞)の研究の流れを汲むもので、微生物由来の生理活性物質の探索研究を行い、それらの作用機序および薬効を明らかにしてきました。その過程で、TMS-007を含む多数の新規化合物が見出されました。
2018年6月には、リード化合物であるTMS-007をバイオジェン(米国)に総額3億5,700万ドルで導出する、日本のバイオベンチャーによるディールとして大規模なオプション契約を締結しました。