■2月12日はペニシリンの日!アオカビが救った無数の命
寒さが厳しい2月は、インフルエンザなどさまざまな感染症が増える時期です。感染症の治療においては、古くから多くの研究がなされ、治療薬の開発が進んできました。「ペニシリン」は多くの命を救ってきた感染症治療薬の一つです。
2月12日は「ペニシリンの日」です。1941年のこの日、イギリス・オックスフォード大学附属病院で、世界初のペニシリンの臨床試験が成功したことから名付けられました。
1928年に細菌学者のアレクサンダー・フレミングがアオカビから発見したペニシリンは、第二次世界大戦では無数の命を救い、それまで致命的だった細菌性感染症の治療に革命をもたらしました。発見から約100年近く経つ現在も、世界中で多くの命を救い続けており、20世紀最大の医学的発見の一つと評価されています。
■カビが生んだ医薬の歴史
◆ペニシリン
1928年、イギリスの細菌学者 アレクサンダー・フレミングがアオカビから発見した世界初の抗生物質です。細菌感染症の治療に革命をもたらし、第二次世界大戦中には多くの命を救いました。この功績により、フレミングは1945年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
◆スタチン
1973年に遠藤章博士によって発見されたコレステロール低下薬です。肝臓でのコレステロール合成を抑制することにより、動脈硬化を防ぎ、心血管疾患のリスクを減少させる効果があります。
スタチンは、心筋梗塞や脳卒中の予防に革命をもたらし、現在も2億人もの患者に使用されています。
遠藤博士はこの功績により、2006年に日本国際賞、2008年にラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞、2017年にガードナー賞など多くの賞を受賞しました。遠藤博士はTMS-007の生みの親である蓮見惠司の前任教授で、蓮見が探索研究の手ほどきを受けた師でもあります。
■世界遺産・西表島で発見された黒カビから生まれたTMS-007
TMS-007は、世界自然遺産に登録されている沖縄県・西表島で発見された黒カビに由来する新薬候補です。
蓮見惠司が東京農工大学に在職中に発見した「SMTP (Stachybotrys microspora triprenyl phenol)化合物群」の一つが現在開発中の脳梗塞治療薬候補TMS-007です
■ ティムスが開発中の脳梗塞治療薬の新薬候補TMS-007

- 拡大
- 上図:Niizumaet al. (2024) Stroke55,2786–2794
現在、脳梗塞の治療に用いられる薬は「原則4.5時間以内」の投与に限られていますが、TMS-007は血栓溶解作用に加え炎症を抑える作用も持っており、この2つの作用により血栓溶解を進めつつ脳保護的に働くことが示唆されています。
2018年から2021年にかけてティムスが国内で実施した臨床試験(前期第2相臨床試験)では、下記の事項が示唆されています。
①安全性
TMS-007群とプラセボ群と比較した解析では、TMS-007の投与による有害事象(好ましくない、または意図しない兆候・症状)の増加は認めらませんでした。
②治療可能時間を拡大
この臨床試験は、既存薬の原則発症後4.5時間以内という制限を大きく超える、12時間の枠で行ったもので、平均的な薬剤の投与時間は脳梗塞発症9時間程度でした。それにもかかわらず、プラセボ群と比較して脳出血などの副作用は増加しませんでした。
③後遺症を抑える
脳梗塞発症90日後に後遺症のない状態(患者の自立度の尺度モディファイド・ランキン・スケールmRSで0-1)まで回復した患者の割合は、プラセボ18.4%に対し、TMS-007投与群では40.4%と、統計学的に有意な差となりました。
TMS-007は急性期脳梗塞治療の新たな治療選択肢につながる可能性が期待されています。TMS-007は、日本発の画期的な新薬候補として世界の医療現場から期待を寄せられており、現在、20ヶ国に及ぶ大規模な国際臨床試験(ORION試験)において、投与時間を発症後最大24時間までに拡大し、この結果を検証中です。
■ペニシリンに続く新たな希望〜専門家が語るTMS-007~
脳卒中は日本人の死因第4位、要介護原因第1位の重大疾患です。超高齢社会の日本において、脳卒中後の後遺症軽減や機能回復は、患者さんご本人のQOL向上はもちろん、ご家族の介護負担軽減、医療費抑制の観点からも喫緊の課題となっています。こうした中、TMS-007は、新たなアプローチで脳卒中治療に希望をもたらす可能性を秘めています。
微生物がつくる生理活性物質の探求研究について/取締役会長 農学博士 蓮見惠司
ペニシリン発見から約100年、カビは今も人類を救い続けています。フレミングがアオカビから抗菌作用を見出したように、私たちは西表島の黒カビから血栓溶解促進作用を発見しました。微生物は長い進化の過程で多様な化合物を生み出してきました。その中には、人類が直面する医療課題を解決する鍵が隠されています。このような探索研究は画期的な医薬品を生む強力な武器であり、TMS-007の発見と開発もその系譜に連なる成果だと考えています。
TMS-007の位置づけについて/東北大学大学院 医工学研究科 神経再建医工学分野新妻 邦泰 先生
SMTP化合物はカビが生産する天然物で、血栓溶解に加え抗炎症・抗酸化など“脳を守る”多面的作用を併せ持つ血栓溶解薬として、従来薬とは異なるアプローチが可能です。脳梗塞は時間との闘いで、治療の遅れが後遺症に直結します。私自身、動物モデルで顕著な効果を確認し、国内の前期第2相試験にも携わりました。治療可能時間を拡げ、より多くの患者さんに届ける新しい選択肢として、早期の実用化と国際試験の成功を期待します。
■ ティムスとは
当社は、2005年に、東京農工大学発酵学研究室教授(2023年定年退職、現特任教授)の蓮見惠司(当社設立以来、研究成果実用化のため、取締役、代表取締役社長等を兼務)らが発見した医薬シーズを実用化することを目的に設立されました。
同研究室は、故・遠藤章博士(コレステロール低下薬スタチンの発見者、2008年ラスカー臨床医学研究賞、2017年ガードナー国際賞)の研究の流れを汲むもので、微生物由来の生理活性物質の探索研究を行い、それらの作用機序および薬効を明らかにしてきました。その過程で、TMS-007を含む多数の新規化合物が見出されました。
2018年6月には、リード化合物であるTMS-007をバイオジェン(米国)に総額3億5,700万ドルで導出する、日本のバイオベンチャーによるディールとして大規模なオプション契約を締結しました。