TMS-008は、SMTP化合物群に属する化合物であり、抗炎症作用と抗酸化作用を有しますが、血栓溶解作用は持ちません。
TMS-008は様々な炎症性疾患動物モデルで薬効を示していますが、当社では、急性腎障害(AKI)及びがん悪液質を対象として、優先的に開発を進めています。現在は、第Ⅰ相臨床試験の申請に向けて、GLP安全性試験及びCMC関連の開発を実施しています。
※1 GLP(Good Laboratory Practice):適性試験実施規範(基準)。非臨床試験の安全性試験を適切に実施するための基準を定めた厚生省令
※2 CMC(Chemistry, Manufacturing and Control):医薬品に関する原薬、製剤の「化学、製造、品質管理」

急性腎障害(AKI)

急性腎障害(AKI)は、数時間から数日の間に腎機能が急激に低下する疾患です。AKIの正確な疫学情報はありませんが、米国では年間約56万人が発症するという報告があります(*1)。AKIによる入院患者のうち20~25%が死亡し(*2)、また生存しても慢性腎臓病(CKD)に移行する患者も多いという報告もあります。このような重大な疾患であるにもかかわらず、AKIを対象として承認された治療薬は存在せず、大きなアンメット・メディカル・ニーズ(まだ有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ)となっています。AKIの発症原因には、心臓手術や薬剤の副作用によるものなど、様々なものがあります。

 

*1 Clin J Am Soc Nephrol 1: 43–51, 2006
*2 Nephron. 2017 ; 137(4): 297–301

 

がん悪液質

がん悪液質は、進行がん患者の約80%に認められるとの報告があり(*1)、全身性の炎症を核とする疾患と考えられています。「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無を問わない)を特徴とする多因子性の症候群」と定義されます(*1)。
がん悪液質患者は、体力の低下により通常のがん治療を受けることができなくなる場合も多く、がん治療の予後に影響があることから、積極的な介入が必要です。
しかしながら、がん悪液質に対して、全身性炎症の抑制を主要な作用機序とする治療薬はいまだ承認されておらず、新たな治療薬のニーズは大きいと考えられています。

 

*1 静脈経腸栄養 Vol.23 No.4, 2008: 607-611
*2 Fearon K, et al. Lancet Oncol. 2011; 12(5): 489-495